仕事知る

どんな人々が、どんなミッションを持って、何に挑むのか。
プロジェクトストーリーで知る、DPTのシゴト。

プロローグ

DPTの事業開発課が手がけているe-minori。これはビニールハウス内環境の「測定」と「制御」両方ができる統合環境制御システムだ。これまで農業とは無縁だったS.M、N.T、S.Tの3名がe-minori開発に挑むことになった経緯、開発秘話をプロジェクトストーリーとしてお届けします。

  • 左:S.M エンジニアリング事業部 事業開発課
  • 中:N.T エンジニアリング事業部 事業開発課
  • 右:S.T エンジニアリング事業部 事業開発課

きっかけはDPT社員の父。

「親父がビニールハウス内の環境測定を行うシステムを導入してみたけど、うまくいってないみたいなんだ」そう話してくれたのは、DPTで車載系の開発エンジニアをしている社員だった。いちご農家にとってビニールハウス内の温度や湿度の管理はいちごの出来を左右する。

昨今、「スマートアグリ」が脚光を浴びてきている。スマートアグリとはIT(ICT)等の先進技術を活用して農産物の生産管理や品質・生産効率などの向上を実現する、新たな農業の取り組みやあり方のことである。

最初は興味半分、手助け半分で伺ってみたが、測定値を見る専用ソフトウェアを開いてみて、すぐにPCを閉じて返した。この「ソフトウェアがいけてない」ことは誰の目にも明らかで、どうやって使うのかがさっぱり分からなかった。メカやシステムのエンジニアでさえそう思うのに、まして農家の方がこれを使いこなすなんて、とてもじゃないけど無理だとN.Tは感じた。この時、「自分たちならどう作る?」ということが頭をよぎった。e-minoriが生まれるきっかけはまさにこの時だった。

まずは、同等機能のものを作ってみる。

話を持ち帰り、S.M、N.T、S.Tはビニールハウス内の「測定」システムを調査した。現在脚光を浴びている新しい分野ではあるが、デファクトスタンダードが存在するわけでもなさそうだった。スマートアグリ関連のシステムにおいてはオランダが先進国で、日本にも輸入されているようだったが、高機能高価格で小さな農家が導入できるような代物ではなかった。

それに対して見学してきたシステムはリアルタイムな測定ができるわけでもなく、当然のことながら温度管理や湿度管理といった制御もできない。国産システムではあるものの、過去のデータを蓄積して閲覧するだけのシステムであったことから、高機能高価格なシステムに対峙できる国産高機能低価格なシステムを作りあげることができれば、そこに商機があるのではないかとS.Mは感じた。

見学してきたシステムと同等機能のものを作ってみようということになった。「まずはやってみる」これはDPTエンジニアのモットーだ。農業におけるsensingの知見がないから、分からないことも分からない。何を検討すべきかも分からない。だから作ってみて問題にブチ当たる度に三人は調べ、試行錯誤し、プロトタイプを作っていった。

「農家さんには何度も足を運びましたが、エンジニアの共通言語、農家の方の共通言語が互いに通じないところに最初は苦労をしました」とN.Tは言う。プロジェクト開始当時は技術的な悩みよりも、「農業を知る」というところにつまづいたようだ。

本当に難しいのは「測定」じゃない、「制御」だ。

ある程度形になってくると、エンジニアとしては欲が出てくるものだ。「測定値を無線で飛ばしてみよう」だとか、「もっと使いやすく操作を簡素化してみよう」だとか、1つクリアすれば、また1つ課題を自分達で作ってしまう、それがエンジニアというものなのかもしれない。

ある程度「測定」ができるようになったところで「制御」のほうにかかるわけだが、制御の方が遙かに難しい。難しい上にリスクを伴う。例えば、ビニールハウス内の温度を測定し、換気によって温度を下げるとする。制御がうまくいかずにビニールハウス内の温度が上昇し続けたら、作物に被害が出るかもしれない。土壌水分量を測定し、スプリンクラーの制御がうまくいかなければ、土壌が乾ききったり、ビニールハウスが水浸しになってしまうかもしれない。何か問題、被害が起きては訴訟問題になってしまう。そういったリスクが「制御」にはあるのだ。

3人のこだわり、熱意が形に。次世代農業EXPOでの評価はいかに。

手探り状態から始まった開発もいつしかこだわりを実現する段階に入っていた。N.Tは製品そのもの価値である測定・制御の質を追い求めた。S.Mは測定器内の空気を循環させるファンやファンの風量、測定器の筐体にこだわった。S.Tは農家の人でも使いやすいソフトウェアを追求した。PCのみならずスマートフォンアプリでも操作できるようアプリも作った。3人のこだわりが一定の形になった2016年10月、3人が作ってきた一連のシステムを「e-minori」と命名、幕張メッセでの「次世代農業EXPO」にて初お披露目が実現した。ここでの出展を目指してきたこともあったが、製品としてアウトプットし、評価を受けるステージにようやく立てたのだった。

出展ブースでe-minoriを手に取る人々。「こういうことはできないのか?」と興味深そうに質問してくる方々も。特に換気の制御に関する質問が多かったとN.Tは言う。実際に使う農家さんの声が新しい機能要件となって、e-minoriは更なる進化を遂げるべく、3人は開発の新たなステージに入ることになる。